手越くんの話

他人

 

私はこんなにも彼らのことを知っているのに、彼らは私のことを何も知らない。

 

当たり前だけど。

 

アイドルを応援する上でわきまえなければならない事実は、アイドルは他人。

 

そこを抑えられない人が、アイドルへのストーカー行為に及ぶこともある。

必要以上に苦しまなければならないことになる。

 

人は誰でも自分の幸せを決める権利があるっていうよね。

でも、他人の幸せを決める権利はないのだ。

 

私は、それを理解しているつもりだった。

そんなことは知ってたんだけどなあ。

 

 

 

・当時の発表を受けた私

まず、前提として、私は手越くんがNEWSを脱退する、退所するなんてことは発表まで、1ミリも信じていなかった。

 

前日に行われた、手越くんの存在を、復帰を願うように作られたあからさまな空白のあるライブ。

手越くんが今まで語ってきた、NEWSへの愛。

 

疑う要素は私にとってひとつもなかった。

 

はずだった。

 

そんな私に飛び込んできた知らせは、どこか現実味がなく、ふわふわしたもので。

 

私はそれなりにジャニーズを長く見てきているので、退所した人も、その経緯も知っている。

 

初めてのパターンだった。

 

退所する日にグループ脱退、事務所退所の発表がされたのは。

 

事務所からの文書はあまりにも短く冷たいものだった。

 

私が当時感じた感情は、悲しみではなく困惑。

 

どうして、辞めるの?

どうして、今?

 

急に発表された意味も、何の説明もなく急に現れたTwitterのアカウントも。

 

私には何もかもが咀嚼できなかった。

 

 

 

・元気いっぱいの記者会見

ただただ、現実を見たくなくて、泣いたり怒ったりしていた数日間を過ごし、やっと手越くんの会見が開かれた。

 

1時間前から準備して画面を開いたパソコンに、手越んが現れた時は、その変わらない美しい顔に、切なさを感じた。

 

理解が出来なかった。

言っている意味は分かる。

でもそれを上手く咀嚼できなかった。

 

私はアイドルが他人であることを知っている。

 

他人の幸せは私が決めることが出来ない。、

 

私は知っていたんだ。

オートレーサーになりたいと言った森くんや、音楽を本格的にやりたいと言ったすばるくんたちを。

 

アイドルでいることと自分の幸せが決定的な齟齬を起こしてしまうと、「アイドル」と「別の何か」を天秤に掛けるしかない。

別の何かの方が幸せだというならそっちを選ぶんだろうね。ていうか選んでほしい。

 

だってないから。彼の幸せより大切なものなんて彼には1つもないから。

 

脱退・退所の理由は理解出来た。

 

私が咀嚼できなかったのはそこじゃなくて。

 

タイミングなの。

アルバムを発売して、ツアーを発表してチケットを売ってコンサートの日程が決まって本当なら決まっていた初日を迎えて。すべてが決まっていた。ギリギリまで開催しようとしてくれていて、だからこそ毎週毎週開催地ごとに延期が決まっていってつらかった。
全部決まってるんだよ、いつでもやれるよと4人ともが言っていた。当たり前だよ。リハまでやった。衣装に袖を通しさえした。
それなのに今?どうして?
どうしてこのタイミングで、どうしてこんな風に、どうして何の言葉もなく。

 

分からなくて。

 

私にはジャニーズ事務所は、夢を応援してくれる事務所だと思ってて。

 

誰の時だって、グループを脱退したいと言った人たちにはファンと気持ちの整理をつける期間を設けてくれた。

 

手越くんが会見で言った、いつ辞めなければならないかが分からない状況、というのはおかしいと思う。

 

でも嘘をついているとは思わなかった。

 

円満ではないと察した。

 

せめてSTORYをやってほしかった。

WORLDISTAの円盤を出して欲しかった。

収録済みのビューティフルを音源化して欲しかった。

 

タイミングの理由、言わなかったね。

それで納得できると思う?

出来ると思うかな?

私たちの知りたいこと、まだ話してないよ。

 

置物のように座っているだけだった弁護士の先生が会見終盤に突如マイクを持ち「お互いの認識に相違があり……」としゃべりだした時、ズドンと強烈に腑に落ちた。私たちは教えてもらえない。本当に知りたいことはこの先もずっと聞けない。

 

私たちが知りたいことは、言ってはいけないこと。

きっと事務所と手越くんが言わないと決めたことなんだね。

 

言わないと決めたことが何かあって、嘘をついてはいないけれど「それ」を迂回して喋っている。
でもその「言わないと決めたこと」こそが多分私の聞きたいことで、それを聞かないと私がこの顛末を理解することはできない。
なんでなんだろうな、とまだ今も思う。半年経っても思う。

 

私が納得できない点については、合理的な理由が今も思いつかない。

 

ベストではないけど今の状況からしたらこうするしかないねって、事務所と手越くん両方が考えた末に折り合いをつけた場所。それがどうしてこうだったんだろう。こんなやり方が落としどころになる事情って何だろう。

 

分からない。

 

知りたい。

 

でも私は、もう、分かることはないと諦めちゃった。

 

諦めたけれど、ずっと分からないままなんだなぁ。

 

 

・NEWSの手越祐也

信じられないくらい愛らしい笑顔で笑う人だったな。


感情が顔から溢れちゃってる!みたいな、表情に気持ちが収まりきらない!みたいな、そんな大輪の笑顔で笑う人。その顔を見る度に愛おしすぎてちょっと胸が苦しかった。


優しい人だったね。

 

優しいからこそ強かった。信じられないほど優しいから信じられないほど強くあろうとして、自分の弱さを切り捨ててしまうような人だった。 


てんでめちゃくちゃな人だった。

人と違うことを恐れない人だった。

 

彼のめちゃくちゃな語順の喋り方が好きだった。


テレビで服をいじられて「オシャレしてなくてもモテんのよ」に続けて「よくね?別にだから服なんて」と言った時みたいな、頭の中がそのままこぼれてくるみたいな話し方。「~なのよ」「~だわ」って、乱暴でもないけど丁寧でもない語尾も好き。
人と違うことを恐れないけれど、一方で本人が思っている以上にずっと素直でピュアな人でもあった気がする。「俺清楚だからさあ!」とギャグのつもりで言ってどっと笑いが起きた直後に、死後の世界があるかないかと言われて「あった方が素敵じゃない?」と他意なく言うような人だったから。

 

心根の優しい人だと今も本気で思う。

 

活力あふれる人だった。


大好きなサッカーに携わる仕事がしたくて、実際にその夢をかなえた人。虹色のマフラーを巻いてサッカーの解説をして「手越は本当にサッカーが好きな人、好きじゃないとあんなことまで話せない」という声を見る度嬉しかった。


NEWSのリリースにすごく間が空いた時、大人のところに「シングル出したい!」と直談判しにいったらしい。

 

努力して英語を身につけた。イッテQのロケでよく海外に行き、NEWSのメンバーの中では飛びぬけて渡航経験が多かった。
海外ではさあ、と口癖のように言っていた。海外ではこうだから、日本はそうじゃないけど俺は全然恥ずかしくない。愛情表現はした方がいいよ、堂々としていいじゃん。

 

出来ることもやりたいこともたくさんたくさんある人だったね。


ジャニーズをよく知らずにデビューして、ジャニーズという概念に憧れのない人だった。少し見ているだけで分かった。ファンのこともNEWSでいることも愛してくれていたけれど、ジャニーズ事務所にいることへの執着は感じなかった。ジャニーズという組織の中のてっぺん、ジャニーズという存在の中の最終形態に、多分手越くんは全然憧れていなかった。

 

当時の私は分からなかったけど、今考えれば、辞めたい気持ちを全く感じない人ではなかったかもしれない。

本人も「辞めようと思ったことがある」と語っていたし、彼がやりたいことのいくつかはこの事務所にいたら実現に途方もない時間と労力がかかるのはファンである私にもわかるし。


それでも手越くんがNEWSでいてくれるのは、彼をアイドルに繋ぎ止めているのはファンからの愛とファンへの愛だったんだろうなって。
時々少し申し訳ない気持ちになった。アイドルでいてくれてありがとう、この場所に引き留めてごめんね、そんな風に弱さを捨てさせてごめんね。それをこんな風に申し訳なく思うことが一番後ろめたかった。彼が選んでくれたことに、ありがとう以外の言葉なんて本当は望まれていなかったと思うから。

 

彼はそういう人だったね。

 

もっと上手く生きてよと思うこともあった。

週刊誌。
他人の悪意に晒されて何回この人は泣かされるんだろうと思った。
それでもたぶん、他人に興味ないなんて口では言いながらも、根本的に人が好きで優しくで、自分に好意を示してくれる人にはどんな人にも好意で返してしまえるような人で、そんなところが大好きだと思った。

 

 

 

・終わりの覚悟

アイドルは永遠ではない。

 

それは分かってて。

 

でも、今ではないと私は信じてたから。

 

こんな風に終わるとは思いもしなかった。


「言い訳ひとつせず」「悪者になって」みたいなの、誰が言われててもいつも全然誉め言葉だと思えない。

 

言い訳してくれよ、悪者にならないでくれよ、こっちは嫌いになりたくなんかないんだよ。

 

アイドルは「普通辞めない」ものなんかじゃなくて、結構普通に辞める。それはもう知っている。それでも傷つく。

 

覚悟はやっぱり出来ない。

 

 

 

・上手な辞め方

ここまでをまとめると。

 

私は手越くんの脱退、退所について、

 

上手な辞め方ではなかった

 

と思う。

 

私、4人があまりにも大好きで、4人を見ているのがあまりにも楽しくて、4人を好きでいるのがあまりにも幸せだったんだよね。

 

それがいつか、終わってしまう日がくるのは分かってたけど。

 

その気持ちを整理する時間が欲しかった。

 

世間からの反感も買わず、NEWSファンもバラバラにならず、みんなが、彼も3人のNEWSも応援できるような、そんな辞め方があったはず。

 

それが悔しいんだよ、私は。

 

話し合って全員が納得して、背中をたたかれ送り出されてほしかった。

好きだから、4人が大好きだったから、完結した漫画を大事に本棚にしまうような気持ちで「4人のNEWS」とお別れしたかった。

 

できなかった。

 

打ち切りになった漫画、解散したバンド、そういうものと同じ気持ちの箱に4人を入れなければならないことが素直に悲しいんだよ。

 

 

・これからの私のスタンスの話

現時点で、私はNEWSが大好きです!

 

そして、手越くんのことも嫌いになってはいない。

 

辞め方は納得できなかったが、辞める理由は納得出来るし。

 

思い出すほど、トンチンカンで面白くて可愛くて最高のアイドルだった手越くん。

 

大好きだったよ。

 

大好きな4人を胸にしまって、私は3人のNEWSを全力で応援することとした!

 

 

自分が見たいと思ったエンタメを選択して応援していこうと思って。

 

だってアイドル応援は趣味なので。

 

苦しんで応援するのは違うかな〜って。

なんて言いながら何回泣いてんだよでてな笑

 

手越くんが見たくなったら見る。

ただ今はまだその気持ちはないかなぁ。

まだ傷は完全には癒えてないので。

 

でも、

 

アイドルでなくなった彼の人生は誰のものでもなく、手越くんのものだから。

 

だから、どうか幸せになって欲しい。

 

私の願いはそれだけだよーーーー。